ルウ
 「…………。

メル
 「答えられない、ということは迷いが残っているようね。

ルウ
 「……そうかもしれません。

メル
 「だったら、別の質問をするわ。ルウ……きみはなんのために行くの?

ルウ
 「もちろんクレアを取りもどすためです。僕はそう誓ったから……。

メル
 「でも、クレアさんを救うために
  ヴァレンとデュープリズムを解き放てばどうなるか。
  それぐらい、とっくにわかっているはずね。
  大きな……とても大きな災いが起こるかもしれないわ。
  たとえクレアさんがよみがえっても
  そのかわりに何千何万もの命が失われるかもしれないのよ。
  もしかしたらクレアさんの復活に失敗して
  あげくに世界も破滅してしまう、という最悪の状況も、充分にありえるわ。

 「残酷な質問をするわよ、ルウ。きみにとって、大切なのはどっち?
  世界よりも、クレアさんのことが大切?
  それとも、クレアさんよりも世界のほうが大切なのかしら?

クレア
ルウ
 「僕は、最初の誓いを守りたいんです。
 『かならずクレアを救う』って誓いを……。

 「自分勝手なのは、わかっています。
  だけど、今の僕に信じられるものはそれしかありません。

メル
 「そう……わかったわ、そこまで真剣に想っているなら
  わたしは、なにも言わないわ。
  行きなさい、ルウ。ヴァレンの聖域へ。
  どんな危険が待っていようとクレアさんを取りもどすのよ。
  そしてクレアさんを助けたら二度と離したらダメよ。

ルウ
 「……はい!

メル
 「わたしの話は、これでおしまい。長い間ひきとめて、ごめんなさいね。

 「行ってらっしゃい、ルウ。自分の力を信じて進むのよ。

世界
ルウ
 「3年前、僕は『かならずクレアを救う』と誓いました。
  でも、それだけのために行くわけじゃありません。
  クレアを救っても世界が滅びてしまったら、なんの意味もないから。
  ドールマスターは、ヴァレンを復活させるつもりです。
  そうなったら、世界は……。僕は、それを食い止めたいんです。
  クレアのためだけじゃない。世界の破滅を防ぐために、僕は行きます。

メル
 「そう……わかったわ。でもね、これだけは言わせてちょうだい。
  どんなにつらいことがあっても自分のほんとうの気持ちを見失っちゃダメよ。
  ほんとうに大切な願いならば誰がなんと言おうと、全力で実現するのよ。
  でないと、きっと後悔するわ。

ルウ
 「……はい!

メル
 「わたしの話は、これでおしまい。長い間ひきとめて、ごめんなさいね。

 「行ってらっしゃい、ルウ。自分の力を信じて進むのよ。

選べない
ルウ
 「どちらかなんて、選べません。僕は『かならずクレアを救う』と誓ったし
  この世界を滅ぼしたくもない。
  だからクレアを助けて、破滅を止める。それしかないんです。

メル
 「クレアさんも救って、世界の破滅も食い止めるというわけ?
  はっきり言って、甘い考えじゃないかしら。うまくやれるって約束できる?

約束する
ルウ
 「はい……約束します。

メル
 「いい答えよ、ルウ。
  自分の力を信じて進みなさい。
  でも、この約束をやぶったら
  一生わたしのアトリエで
  そうじ当番ですからね。

ルウ
 「ええっ!? そ、そんな……。

メル
 「行ってらっしゃい、ルウ。
  この約束、守ってちょうだいね。
  きみの力、信じてるわ。
約束できない
ルウ
 「僕に、できるだろうか……。

メル
 「あら……情けないわね。
  ルウ、よく聞きなさい。
  きみが迷ったり、悩む気持ちもわかるわ。
  でもね……迷っているだけで
  はなにも実現できないのよ。
  きみは翼を手に入れたのだから
  あとは飛べばいいのよ。
  自分の力を信じて、高く飛びなさい。

ルウ
 「……はい。

メル
 「行ってらっしゃい、ルウ。
  きみの力、信じてるわ。

メル
 「行ってらっしゃい、ルウ。きみの力、信じてるわ。

 「わたしに言えることは、もうなにもないわ。あとはきみが決めるのよ。

 「おそれることなどないわ。
  きみは、どこへでも行ける自由な翼を持っているのよ。