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いつかめぐりあうきみへ



ルウ
 (う……。

 (なにが……起こったんだ……。

 (僕は、まだ生きているのか……?

 (……クレアは!?


≪カローナの街≫

宿屋・ルウの部屋
メル
 「おはよう、ルウ。

ルウ
 「メルさん!?

 「ここは……僕の部屋?

メル
 「とまどうのも無理はないわね。3日も眠りつづけていたんですもの。

ルウ
 「3日!?

メル
 「ヴァレンの聖域が崩壊したあの日……。
  湖畔に倒れていたきみをエレナが発見したの。きみは意識を失っていたわ。
  だからわたしが呼ばれて魔法で治療していたのよ。

ルウ
 「クレアは!? 彼女はどこにいるんですか!?

メル
 「あわてないで。クレアさんもきみといっしょに発見されたわ。

ルウ
 「あの……クレアは元気なんですか?

メル
 「…………。

ルウ
 「メルさん?


メル
 「どうとも言えないのよ。

ルウ
 「!!

メル
 「クレアさんは、生きてはいるわ。
  でも……ずっと眠りつづけているの。どう処置しても目を覚まさないのよ。
  いろいろ治療魔法を試してみたけれどどれも目立った効果がなくて……。

ルウ
 「なっ……。

 「じゃあクレアは、ずっと目を覚まさないんですか!?

メル
 「そうは言わないけれど、
  彼女の眠りがいつ終わるか、わたしにはわからないわ。
  明日かもしれないし、1年後かもしれない。
  ひょっとしたら、永遠に眠りつづけるかもしれない……。

ルウ
 「クレアは、どこにいるんですか。

メル
 「クラウスさんの家で眠っているわ。
  でも……会えば逆につらいかもしれないわよ。

ルウ
 「つらくなんかないです。
  今は眠っていても……彼女は生きてる。きっといつか元気になると思います。
  僕、信じてます。

メル
 「そう……。

 「わたしの役目はここまでのようね。
  これ以上、わたしにできることはないしもうその必要もなさそうね。
  だって、きみはずいぶん強くなったもの。

ルウ
 「えっ?

メル
 「さよなら、ルウ。クレアさんが早く目を覚ますように祈ってるわ……。


ルウ
 「メルさん……。


宿屋
カーサ
 「おやおや、やっと起きたのかい。
  3日も眠りっぱなしだったから気が気じゃなかったよ。

 「目が覚めてよかったよ……。
  しばらく外へ出ておいで。部屋を掃除しといてやるからね。

 「あんたが寝てる間に、いろんな人がお見舞いに来たんだよ。
  クラウスさん一家はもちろんベルとデュークって二人組や
  ロッドまでやって来たんだ。
  おまけに、東天王国のお姫さままでご来訪ときたもんだ。
  あんたは、いい友達を持ったねえ……。

 「知ってるかい?
  あんたが眠っている間に、いちばん心配していたのはミントなんだよ。
  あの子、見た目はああだけれどほんとうは優しい子なんだねえ。

 「なんだい、宿帳に記録するのかい?


噴水広場
マルコ
 「クラウスさんちのあの子と遊ぼうかな……。

 「もうすぐ定期船が来るんだ。
  ニールさんもマーカムさんも街を出ていっちゃうんだって。

 「ロッドもいなくなっちゃうよ。もうジョニー・ウルフと遊べないんだ……ちぇっ。

 「教会で、知らない人を見たんだ。誰だろう?

 「ねえねえ、知ってる? 東天王国のお姫さまがホテルに泊まってるんだよ!

 「空に浮かんでたヘンな城が見えなくなっちゃった……。
  静かになったのはいいけどなんだか、つまんないな。


マーカム
 「そろそろ都に帰ることにします。
  この街は居心地がいいのでつい長居してしましましたが……。
  商会の経営を放り出すわけにはゆきませんからな。

 「ずいぶんと大きな騒ぎでしたな……。
  若い時分を思い出して、ひさしぶりに血が騒ぎましたよ。

 「この美しい噴水も今日で見おさめですな。

 「都を訪れることがあったら、ぜひ私の店においでください。歓迎しますぞ。

 「不思議なものですな。騒ぎが一段落して、
  安心するはずなのに軽いさびしさをおぼえるのです。なぜでしょうなあ……。


教会
 誰もいないが、教会から出ると
 トラップマスター、モードマスター、サイコマスターの3人が
 姿を現わし、すぐにまた消える



トニオの店
トニオ
 「すいません、今日は準備中なんですよ。

 「もうすぐ定期船が来るんですよ。
  都から、たくさんの品が届きますから楽しみにしてくださいね!

 「そういえば……。お客さんが初めてカローナの街に来た日も
  うちの店は準備中だったんですよね。

 「お店の準備ができたらたっぷり買い物してください!


クラウスの店
クラウス
 「おお、ルウ君! もう歩けるのかね!?

???
 「えっ!? ルウが来たの!?
ルウ
 「プリマドール!! 元にもどったのかい!?

プリマドール
 「うんっ♪ ファンシー・メルって人が魔法でなおしてくれたんだ!
  へへっ♪ ボク、もう元気いっぱいだよ!

ルウ
 「よかった……。

クラウス
 「ルウ君はクレアさんのお見舞いに来たのかな。

ルウ
 「はい。彼女……まだ眠っていますか。

クラウス
 「まあ、その……。

プリマドールがあわててクラウスになにかを合図する
ルウ
 「なにかあったんですか!?

クラウス
 「いや、そういうわけではないがね。まだ目を覚ましていないんだ、うん。

ルウ
 「じゃあ、顔だけ見ていきます。

クラウス
 「えっ!? それはちょっと……。
  とにかく、今はまずいんだ。なあ、プリマドール君?

プリマドール
 「そうだよ。男の子は入っちゃダメなんだって!
  だからボクも追い出されちゃったんだ!

クラウス
 「ミラとエレナが世話をしているよ。
  今すぐ顔を見たい気持ちはわかるが少しだけ待ってくれないかね。

ルウ
 「そうですか……。

プリマドール
 「それよりさ、ルウ! 聞いて聞いて!
  あのね……ボクに家族ができたのさっ!

ルウ
 「君に……家族が?

プリマドール
 「へへっ♪

クラウス
 「プリマドール君を、うちで引き取ることにしたんだ。
  エレナも、弟ができてよろこんでいるよ。

プリマドール
 「ボク、もうさびしくないよ!

 「ねっ、おとうさん♪

クラウス
 「うむ。

ルウ
 「そうか……おめでとう、プリマ。

プリマドール
 「ルウが、悪いやつらをやっつけてくれたからだよ。ありがと、ルウ!

クラウス
 「さて、ルウ君。クレアさんのお見舞いはちょっと待ってくれないかね。

ルウ
 「はい。


クラウス
 「ルウ君、いろいろと世話になったね。とても楽しかったよ。

 「なにはともあれみんなが無事でよかった……。

 「すまないが、もう少しだけ待ってくれないかね。


プリマドール
 「おかあさんと、おねえちゃんがクレアさんの看病をしてるよ。

 「ダメダメ! まだ入っちゃだめだよ!

 「男の子は見ちゃいけないんだって。なにしてるんだろう?


噴水広場
???
 「ルウ!!

ミント
 「やっと起きたのね。
  3日も眠りっぱなしだったから、
  このまま死ぬまで寝てるんじゃないかと思ったわ。

ルウ
 「ありがとう、心配してくれて。

ミント
 「な〜に言ってるのよ。あたしがあんたの心配なんかするわけないでしょ!

 「そりゃ、出発する前に会えてちょっとはうれしいけどさ〜。

ルウ
 「出発って……どこへ?

ミント
 「実家よ、実家。
  もう2年も帰ってないから、妹を送るついでに里帰りしようと思ってさ。
  もうすぐ船で出発するわ。だから、あんたともお別れってわけ。

 「しばらく実家でのんびりしてからまた【遺産】をさがしに行くわ。
  デュープリズムよりもスゴイ【遺産】を見つけて……。

 「世界を征服するのよ!!

ルウ
 (こりない人だな……。

ミント
 「とゆーわけで、ルウ!!

ルウ
 「な、なに?

ミント
 「次の【遺産】をさがす時はあんたも手伝うのよ!

ルウ
 「ええっ!? どうして僕が?

ミント
 「そんなの決まってるでしょ!
  あんたはデュープリズムでクレアさんを助けたけど、
  あたしにはなんにもナシよ!
  不公平よ! あたしもがんばったのにあんたばっかりトクしちゃってさ!

 「だから、今度はあたしの野望を実現するために協力してもらうわよ!

ルウ
 「そんなこと言われても……。

ミント
 「【遺産】の情報をつかんだら連絡するわ。じゃあね!

ルウ
 「あ……。

 「やっぱりミントって台風みたいだ……。


ホテル
ソーリン
 「ただいま当ホテルには東天王国のマヤ殿下が滞在しております。

 「お2階へどうぞ。マヤ殿下がお待ちです。

 「今日だけは、兄のリーソンにかわって
  わたくしがカウンターを担当しております。
  たまには気分を変えてみようかと思いまして。

 「実は……兄はマヤ殿下のファンでして。
  少しでも、おそばに近づきたいようです。


リーソン
 「お2階へどうぞ。東天王国のマヤ殿下がお待ちしております。

 「ルウさんが来たら、部屋に通すようにおおせつかっております。

 「今日だけは、弟のソーリンがカウンターを担当しております。
  たまには気分を変えてみようかと思いまして。

 「実は……少しでもマヤ殿下のおそばにいたくて……。


マヤの部屋
マヤ
 「まあ、ルウさん! 意識がもどったのですね。よかった……。

 「ルウさんが回復したということはクレアさんも?

ルウ
 「それが、まだ……。

マヤ
 「…………。

 「よけいなお世話かもしれませんが……。
  今後もクレアさんが眠りつづけるようなら
  ぜひ、わが東天王国にいらしてください。
  わが国の魔法技術ならば、クレアさんを救えるかもしれませんわ。

ルウ
 「本当ですか!? 助かります。でも、どうしてそんな……。

マヤ
 「今回の事件では大きな迷惑をかけてしまいましたから……。
  せめてもの、つぐないです。

ルウ
 「そんな……。僕だってブック・オブ・コスモスをこわしてしまったし……。

マヤ
 「ブックのことは、もうよいのです。
  わたくし、ブックにたよりすぎて自分の力を磨くのを忘れておりました。
  ですから、ブックを失ったとたんになにもできなくなってしまって……。
  自分の無力さを思い知らされましたわ。

ルウ
 「…………。

マヤ
 「ブックが破壊されたことはわたくしにとって良い薬になりました。
  これからはブックや【遺産】の魔力にたよらず、
  わたくし自身の力で国を守りますわ。
  前途多難ですけれど、それがわたくしのつとめですから……。

ルウ
 「うまく言えないけど……。がんばってください。

マヤ
 「ええ、そのつもりです。
  人々を守れる女王になるために努力は惜しみませんわ。
  それがわたくしの夢ですもの。

 「ごきげんよう、ルウさん。クレアさんが助かるようお祈りしておりますわ。


マヤ
 「クレアさんの回復を心からお祈りしています。

 「もしもの時は、東天王国に連絡をいただけますか?
  こちらからお迎えに行きますわ。

 「クレアさんが回復したら東天王国にいらしてくださいね。
  国をあげて歓迎しますわ。

 「次の定期船が来たら、お姉さまといっしょに東天王国に帰国します。
  帰ったら、修練あるのみですわ。
  人々を守れる女王になるためにもっともっと力をつけないと……。

 「わたくし、よい女王になれるでしょうか……。
  お姉さまのように強くなれるでしょうか……。


街外れの草原
ロッド
 「おう、ルウじゃねぇか。またオレ様とバトルしに来たのか?

 「と、言いたいところだが……。

 「悪ぃが、もうバトルはできねぇんだ。
  オレ様の大事なグレートマシンをメンテナンスしねぇとならねぇ。
  今度のトラベルは長くなるから気合入れてチェックしねぇとな。

ルウ
 「この街を出ていくんですか?

ロッド
 「フッ……オレ様は世界をまたにかける男ロッド・ザ・ブレードスターだぜ。
  ひとつのタウンに腰を落ちつけるのも悪くはねぇが、
  長いしすぎるとソウルのファイヤーが消えちまうのさ。
  カローナ・タウンも静かになりそうだ。
  バトルの相手もいなくなっちまうしニュー・ウェポンの材料もさがしてぇ。

 「ここらが潮時ってわけだ。またジョニー・ウルフとふたりでさすらうぜ。

ルウ
 「いろいろ、お世話になりました。

ロッド
 「おいおい、景気の悪いフェイスはよせ。
  永遠にグッバイするわけじゃねぇんだ。生きてりゃどこかで会うかもしれねぇ。

 「いや、『会うかもしれねぇ』じゃねぇな。
  ルウ……おめぇとは、きっとどこかで会うはずだ。会うに決まってるぜ。

ルウ
 「え?

ロッド
 「理由を知りたいか? 教えてやるぜ!
  おめぇは、オレ様と同じように熱いソウルを持ってる……それが答えだ。
  おめぇとオレ様のソウルが共鳴すればいつかかならず再会できるさ。

ルウ
 「じゃあ、ロッドさんに会いたかったら……。

ロッド
 「おめぇのソウルのファイヤーを消すんじゃねぇぜ、ルウ!

 「再会したら、もう一度レッツ・バトルだ! いいな、かならずだぜ!

ルウ
 「はい!

ロッド
 「OKだ。あばよ、ルウ!


ロッド
 「あばよ、ルウ。

 「そんなにロンリーな顔をするんじゃねぇ。
  生きてりゃ、そのうちどこかで会えるさ。

 「ソウルのファイヤーを消すんじゃねぇぜ。

 「再会したら、からなずレッツ・バトルだぜ、ルウ!


裏通り
グレアム
 「こいつらが『強くなりたい』って言うからビシビシきたえてやることにしたぜ。

 「情けない連中だ。腕立てふせ500回ぐらいでもうへたばってやがるぜ。

 「コラ! さぼるんじゃねえ! 次は腹筋300回だ!

 「こうやって、こってりしぼってやれば悪さをする気もなくすだろうさ。

 「俺は明日にでもカローナの街を出ていくつもりだ。次の目的地?
  そんなもん、決めてねえよ。
  そうだな……棒でも倒して、倒れたほうに歩いていくことにするか……。


ブラッド
 「覚えてろよ! いつかテメエにフクシューしてやるからな!

 「ちょ、ちょっと待て! 今すぐバトルするなんて言ってねえだろ!

 「このオッサンのトレーニングはキツすぎるぜ……。

 「見てろよ! かならずテメエより強くなってやるぜ!


スモーキー
 「トレーニングがキビシイっス……。

 「アニキ〜、つかれたッス!

 「ウヒウヒョロヘロ……。こんなに大変なら弱いままでいいッス……。

 「アニキ〜、腹へったッス!


ホッブスの店
ホッブス
 「おととい、クラウスが来てのう。
 『眠りをさます薬はないか』と聞きよったんじゃ。
  なにがあったんじゃろう?

 「おまけに昨日はファンシー・メルまでやって来たんじゃ!
  魔法薬の材料を買っていきよったが病人でも出たんじゃろか?

 「人は見かけによらんのう。
  あの娘っ子が、まさか東天王国の王女だったとはのう……。

 「空の城に行ってきたんじゃろ?
  なにかめずらしいアイテムは見つけんかったか?

 「めずらしいアイテムを見つけたらいつでも売りに来るがいいぞい。
  高く買い取るぞい。


酒場
デューク
 「おっ、ルウ!


ベル
 「その様子だと、体調はいいみたいだね。
  安心したよ。これで心おきなく出発できるね。

ルウ
 「もしかして、ふたりとも……。

ベル
 「ああ、街を出ていくのさ。
  ヴァレンの【遺産】が消えちまった以上
  カローナの街にとどまっていてもね……。
  どこか別の土地で、別のお宝をさがすことにするよ。

デューク
 「おまえとの決着をつけずに出て行くのは心残りだが、
  あねさんの命令だからな。
  また会う日まで、バトルはおあずけだ。

 「おまえは、わが永遠のライバルだからな!
  いつかかならず、おまえを越えてみせるぜ! 首を洗って待ってろよ!

ベル
 「そうかい? そこまで言うならここでバトルしてもいいんだよ。

デューク
 「うっ!?

ベル
 「あたしゃ止めないよ。

デューク
 「えっと……その……。

 「い、今はやめときます!
  寝起きのルウをやっつけても自慢になりませんから!
  言っときますけど、俺は決してビビってるわけじゃないですぜ!

ベル
 「そういうことにしといてやるよ。まったく……。

ルウ
 「ふたりとも、助けてくれてどうもありがとう。

ベル
 「いいんだよ。あたしらだってけっこう楽しんだからね……。

 「さてと、デューク! そろそろ行くよ!

デューク
 「へいっ、あねさんっ!

ルウ
 「さよなら……。

ベル
 「なんだい、元気がないね!
  あんたはヴァレンの【遺産】で願いをかなえたんじゃないか。
  自分のやりたかったことをきっちり実現したんだよ。
  もっとシャキっとして堂々と胸を張ればいいのさ。

ルウ
 「……わかった。

ベル
 「次に会うときまでには、もっとたくましくなっておきな。楽しみにしてるよ。

デューク
 「元気でな、ルウ! またバトルしようぜ!


ジャーゲン
 「お客さんも街を出てゆくようですね……。なにかお飲みになりますか?

 「ああ、お代はけっこう。次に来た時にでも払っていただきましょう。

 「機会が会ったら、また飲みに来てください。お待ちしております。

 「この街も、静かになりそうです。


アリーネ
 「あ〜あ……。旅の人たち、みんなどこかに行っちゃうわ。
  うちの店もさびしくなっちゃうわね……。

 「また遊びに来てね。約束よ!
  お客さんの顔をおぼえてたら一杯おごってあげるわ。

 「うちのマスターって、ああ見えてもさびしがり屋なのよね。

 「ねえねえ、クラウスさんちに新しい子供ができたって、本当?


船着き場
ドイル
 「旅立つ船に、神のご加護を祈ろうと思いまして……。

 「あなたに神のご加護を。
  神は、なにもおっしゃいませんがいつもあなたを見守っていますよ。

 「教会は無人ですが、もしお祈りをささげるのでしたら、ご自由にどうぞ。

 「旅のご無事をお祈りしましょう。あなたに祝福あれ……。

 「神はすべて見ておられます。
  せいいっぱい努力したのなら神はかならず助けてくれますよ。


デービス
 「もうすぐ都へ向かう定期船が来るんだ。ひさしぶりに忙しくなるぞ。

 「さて、今度はどんな客がやってくることやら……。
  船から落っこちるようなドジな客がいなければいいが。

 「定期船には、東天王国の王女が乗るらしい。
  だが、それらしい人物はどこにもいないな………。どんな娘なんだろう?

 「船に乗るなら、もたもたするなよ。あまり長時間は停泊しないからな。
  乗りおくれたら、次の船は一週間後だ。


ニール
 「今度は都に行くことにしたよ。めずらしい品物が、たくさん手に入ったからね。

 「実はね……。
  湖の近くを調べていたら、奇妙なアイテムを山のように見つけたんだ。
  たぶん、あの空の城が崩れたときに落ちてきたんじゃないかな。

 「えっ!? 君はあそこにいたのかい!?
  いいなあ……僕も行ってみたかったなあ。

 「えっ!?  モンスターがいっぱいいたのかい!?
  い、行かなくてよかった……。

 「集めたアイテムを元手に都で小さな店を開こうと思うんだ。
  よかったら、買い物に来てよ。


ミント
 「ひとつ言い忘れてたわ。あんたに会えて、けっこう楽しかったわよ、ルウ。

 「マヤのやつ、おっそいわね〜。なにモタモタしてるんだろ?
  あいつ、昔から身じたくに時間がかかるのよね〜。

 「次に【遺産】を探すときもあんたに手伝ってもらうわよ!


クラウスの店
ミラ
 「あら、ルウ君。

ルウ
 「あの……そろそろクレアに会ってもいいですか?

クラウス
 「ええっ!? それは、その……。

ミラ
 「ごめんね、ルウ君。もう少し待ってくれないかしら。

ルウ
 「そうですか……。わかりました。また後で来ます。


噴水広場
ルウ
 「まだ会えないのか……。顔だけでも見たかったな。


ルウ
 「クレア……。

???
 「ルウ!

ルウ
 「あ……。


ルウ
 「まだ眠っているんじゃ……。

プリマドール
 「ホントはね、ルウより少し先に目をさましてたんだよ!

エレナ
 「ごめんなさい、ルウさん。すぐ知らせようとしたんですけど
  クレアさんに「待って」って言われて……。

ルウ
 「どうして……?

クレア
 「だって……。

 「3年ぶりなのに……寝起きの顔なんて見せたくないもの……。

ルウ
 「…………。

プリマドール
 「だから、ルウにはちょっとだけヒミツにしてたんだよ。

エレナ
 「その間に、お母さんとわたしで身じたくを手伝ってたんです♪

ルウ
 「そうだったのか……。

クレア
 「心配させて、ごめんなさい。わたしのわがままのせいで……。

ルウ
 「いいんだ。もういいんだ。
  僕はただ、クレアに会いたかっただけだから……。

 「おかしいな、僕、どうしたんだろう?
  やっと会えたのになんだか胸がくらくらするんだ。
  クレアのこと、まともに見れない……。

エレナ
 「あれ? ルウさん、ど〜して泣いてるんですか?

プリマドール
 「しっ! おねえちゃん、だまって!

クレア
 「…………。

 「無理しないで、ルウ。
  わたしだって、こうして会うまでは不安で不安でしかたなかったのよ。
  3年ぶりに会うルウがすっかり変わってしまっていたら……。
  3年も眠っていたわたしは、ルウの変化についていけないかもしれない、って。
  ほんの少し……こわかった。

 「だけど……安心したわ。
  少しだけ背も伸びて腕だって太くなったけど……。
  ルウは、ルウのままでいてくれた……。


ルウ
 「…………。

 「……どうしよう。

クレア
 「どうしたの?

ルウ
 「ずっと考えてたんだ。クレアに会えたらなにを話そうか、って。
  くじけそうな時はいつも考えてた。
  最初になんて言うかも決めてあったはずなんだ。

 「でも……クレアの顔を見たら……。
  言おうと思っていた言葉が全部ふっとんで、もう真っ白で……。
  僕……なんて言えばいいのかわからなくなってしまった……。

クレア
 「…………。

 「わたしもよ、ルウ。目を覚ましたときから考えていたのに
  ルウに会ったとたん、忘れてしまったの。
  だから……今の気持ちをそのまま言うしかないわね。

 「ルウ……ありがとう。ルウのおかげで帰ってこれたわ。

ルウ
 「…………。

 「おかえり、クレア。

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